温暖な気候、自由な空気感、クジラやイルカが戯れる透き通った海、新鮮な空気をつくってくれる豊かな森。
バイロンベイの自然とゆったりとしたライフスタイルに魅了されて、
この土地に人々は集まってくる。

その多くは、(私も含め)自分のやりたいことを、自分に正直に、自分らしく生きるために。
あるいは、そのきっかけ、気づきを得るために。

人口わずか3万人程度の小さなサーフタウンだけども、見渡せばカルチュラルクリエイティブと呼ばれるような
イノベータータイプ、アントレプレナーがとっても多い。

知り合いの中でぱっと思いつくだけでも、

アーティスト
フォトグラファー
ファッションデザイナー/オーナー
ジュエリデザイナー
料理人/オリジナルブランドオーナー
カフェ・レストランオーナー
起業家
サーフボードシェイパー
環境保全アクティビスト

などの職業カテゴリーに当てはまる人がそれぞれ5人以上はいる。

クリエイティビティを刺激し、サポートする精神性の高いコミュニティは、お互いを競い合わせるんじゃなくて、
人々をつなげ、よりよいものを、よりより社会を作ろう!という土壌をつくっている。

先日、友人のコーワーキングスペース、The Corner Palm にてバイロン発の起業家たちを集めたトークイベントがあったので参加してきました。

パネリストたちは、

クラウドファンティングIndiegogoでの掲載開始1日目で218万ドル(2億6000万円)到達した
Flow Hive(フローハイブ)

女性のためのサステナブルサーフウェア、Salt Gypsy

環境に配慮したウッドサーフボードのの Wood Surf & Co

3人ともバリバリの起業家というよりは、自分がパッションとすることをとことん
純粋に地道に追求していき、アイディアや試行錯誤を繰り返した結果、
ほんとうに自分にあった、自分が満足する商品やサービスを生み出した人たち。

中でも印象的なだったのは、やっぱりフローハイヴ。
世界中のメディアでそのクラウドファンティングの成功例が取り上げられたことから
ご存知の方も多いかもしれないけど、簡単にいうと、それまで複雑で時間がかかり、
ミツバチにとってストレスとなっていた蜂蜜の採取プロセスを、蛇口をひねるだけ、
というプロセスに簡略化した画期的なイノベーションであったこと。

クラウドファンティング立ち上げ時に掲げた目標金額は$70,000。
それをオンラインになってからわずか7分間で達成し、24時間後には
218万ドル(2億6000万円)を達成し、2ヶ月後には約16億円という破格の金額に到達。
これは、アメリカ国外のキャンペーンとしては史上最速で史上最高の金額。

世界中から巣箱のオーダーが殺到し、目標にしていた1000個の顧客メールアドレスをはるかに越える
7万個のアドレスが1週間でメールボックスにたまった。

その成功に起因したビデオがこちら。

3世代にわたって養蜂を営むアンダーソン家のシーダーとステューが開発した巣箱は
ミツバチにとっても、養蜂家にとっても、優しい簡単なプロセスとして紹介され
多くの人の注目を集めました。

ただ、これだけの脚光を浴びれば、もちろんその逆の反応もあり、
伝統的な方法でずっと養蜂してきた農家たちから、蜂たちの生態系を軽視し、従来の苦労や手法を無視して
商品化してしまったことに対する非難、中傷も、たくさんあったとシーダーは話してくれた。

1日に何百通とくる苦情や怒りのメールに一時は一喜一憂し、真摯に、正当な回答を考えたときもあったが、
そのことに負のエネルギーを費やすよりは自分が信念として掲げた、蜂にストレスをかけずに、養蜂をもっと楽しい、
身近なものにというモットーにそって、苦難を乗り越えてきたと言います。

バイロンの小さな家族経営の養蜂家は、いまでは120カ国に輸出し、40人のスタッフを
雇用するビッグビジネスに成長しています。そのマネジメントの苦労も想像しがたいですが、
シーダーは気負いせず、農家のせがれ、という言葉が似合う、シンプルで人間臭い、
温厚なゆったりとした雰囲気。

SALT GYPSYのDANIELLE は、長年モルディブでサーフガイドを務めていた経験から、
ハードな波でも安心してサーフィンできる女性らしい可愛いサーフウェアを探し求め、
サーフレギンスを業界に初めて導入したパイオニア。レギンスであれば脱げる心配もないし、
男性の視線を機にすることもなく、強烈な紫外線から皮膚も守ってくれ、そして
柄も可愛くデザインできる。

ブランド立ち上げ当初はコスト面からバリでの製造を行っていたが、
良質な生地や極力リサイクル素材にこだわり、環境に配慮した製造プロセスを重視した結果、
いまではオーストラリア国内の製造に切り替え。
バイロンベイの街中にコンセプトショップ、SEA BONES も立ち上げ、女性のココロをくすぐる
ローカルデザイナーのサーフ&ビーチウェアやコスメ、小物、アート、写真、サーフボードなどを取り扱っています。

WOOD SURF & CO のDANAも、サーフィンが好きで、でも従来の大量生産型の流通ボードは
製造の際に有害物質を排出し、決して環境に配慮したものとはいえず、そんな道具をつかって
綺麗な海でサーフィンすることにずっと違和感を感じていたと言います。

そこで、シェイパーのアンディーと2人3脚で試行錯誤した結果、たどり着いたのが
ウッドボード。人々の環境意識がますます高まる中で、サーフィン業界における
サステナビリティも無視できないビジネスになってきています。

3人の話を聞いていて共通していたことは、始まりは、自分ごととして、自分の眼の前にある課題、
問題を解決したくて取り組みはじめたことだけでも、その視野の先には、環境への配慮、社会への気遣い、
コミュニティへの貢献などが常に念頭にあったこと。

私利私欲のためにビジネスを追求するのではなくて、どうしたら自分の発想やクリエイティビティが
社会や地球環境の問題の解決にもつながり、よりよい社会をつくっていくかということに
やりがいを見出している。

どんなに大きなビジネスであっても、はじまりはいつだって勇気ある一人の、あるいは数人の志をもった
人たちが、この問題をどうにかしたい!と思う強い行動力、向上心があったからこそ。
そして、根気よくやり続ける、諦めない、やり抜く意思の強さ、忍耐も大切な要素。

等身大に自分の過去や失敗を赤裸々に、そしてそれがあったからこそ、いまある成功と楽しみを
語ってくれたシーダー、ダニエル、ダン、素敵な学びをどうもありがとう。